破魔弓
破魔弓は無病息災を願う「まじない」
勇壮な弓破魔は、高級なものほど素材にこだわっています。天然羽根、梅や菊の組み紐房など人気があります。弓矢の神事には鳴弦の儀、流鏑馬、上棟式などがあります。その威力は古代から信奉されてきました。
破魔弓飾りは本来、魔除けの「まじない」であり、健康祈願です。また同時に、武勇を表す誇りとして受け継がれてきました。
力強く育ってほしい男子には、欠くことのできないお守りなのです。
そして、現代では廃れてなされていませんが、かつて正月には、男の子の遊戯として射的遊びがなされていました。的は「はま」と呼ばれ、疫病を象徴していました。それを射るという行為には、その年の無病息災を願う「まじない」の意味が込められていたのです。
また、古くから神社・仏閣では弓矢が飾られていました。そして江戸時代には既に、城下町を中心に、武家や町人の家で男の子ができると初正月の祝いに「弓はま」を贈るという習慣が生まれていました。この伝統的な習わしは連綿と続き、人々に広く伝わっていったのです。
破魔弓はもともと、矢を入れる道具である靱(うつぼ)に弓矢を配したものを飾ります。時代とともに、矢数の多いものや双弓型、大小太刀を配したもの、出世兜や打出の小槌を配したもの等、様々な飾りが生まれました。天然羽根の矢や本籐巻の弓など素材にこだわった高級品もあります。
飾ること、贈ることの意味は、「はま」に「破魔」の字をあてたことでも分かるように、魔除けです。しかし、同時に、弓矢に対する信奉は、本来、武勇を表すものであり、それにもとづく誇りに通じます。つまり、破魔弓飾りは、健康祈願の魔除けであると同時に、誇りの伝承を意味しています。
男の子に初正月の祝いとして贈られる破魔弓には、雄々しく羽ばたいてほしいという、赤子に対する悠久の願いが込められているのです。